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女ふたり、札幌ラーメン屋を営む

「あのばーさん、まだ生きてっかな」というのが目的で、
客が年中はいっているラーメン屋がある。
そのラーメン屋のカウンターに並ぶ客の面子は、
ほぼ、ばあさんの息子世代にあたるおやじだらけ。
絶対に、ばあさん目的であるとにらんでいる。
ばあさんが今日も店に立ってるかどうか気になるから、
思い出したようににまた店に立ち寄るおやじがいる。
そのおかげでそのラーメン屋は細々と店を続けているのではないか。

個人できりもりしている町のラーメン屋に入ってみた。
店の主人は、おやじではなくおばちゃんである。
おばちゃんの旦那の母か、自分の母親なのか、70代かと思われるばあさんも、
カウンターの中に立っている。
おばちゃんは、炒め係、ラーメン完成係である。
ばあさんは、麺ゆで係り、注文取り、お冷や出し係である。
ばあさんは、耳の聞こえがいいらしい。客の普通の声の注文もとっている。
しかし、いかんせん動きがとろいのである。
注文をとり、色分けの札を並べて、麺をゆでて、客に水だしをしていると、
だんだん動作のテンポが遅れてしまい、
二巡目位の客のオーダーをとれなくなってしまうのである。
お客は、ばあさんがカウンター内をあちこちしていて、
ようやっとカウンター側を見たとき、すかさず「注文いいですか」と
声をかけるタイミングをつかまなければいけないのである。
または、(ばあさん注文ちゃんと受けてくれたかな)、(早く水くんねえかな)、
とやきもきしながら、待つことになるのである。
気づけば、カウンターのおやじたちは、きょとんとした顔をして丸イスに整列して、
おとなしく待っているという図ができあがっている。

ばあちゃんを仕切るのは、おばちゃんである。下町風のきりりとしたおばちゃんだ。
喜怒哀楽は顔にあらわれるという感じで、ばあさんに軽く怒りながら、ラーメンを作っている。
(ばあさん!あのお客注文とってないじゃない!)
(味噌とライス大盛りって注文だったでしょ!札が並べてないじゃない!)
という気持ちがあわらなのである。
これは、ラーメン待ちの客としては、ひやひやと見守るだけの観客となる。
ばあさんは、ひっつめ頭に黒いかっぽうぎを着て、
それはそれは働く女のいさぎよい姿をしている。すこしばかり、のろいけれど。
年だから仕方ない。よく、がんばっている。と客は誰もが思っているはずである。

ようやっと、ラーメンがきた。
味は、家庭風の味噌ラーメンであった。
もやしは煮すぎてしゃししゃりしていない。とても家庭的な味である。

女ふたり、小さなラーメン屋きりもりして、えらい。
そうだな、一人くらい注文取りの子どもか嫁がいたら、楽なんだろうな、と。

家庭的なラーメンを食いたくてやってくるおやじもいるのだろうが、
なによりも二人が今日もがんばってラーメン屋をやっている姿が見られれば、
平和な一日となるような願い、ばあさんの生きている姿をみて母親の顔をおもいだすとか、
そんな理由で、客はきてるんだろう。

ラーメンの味はまあまあだが、全体的に見て、とても善し、としたい店なのであった。
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by olzon | 2004-12-28 20:32 | - 味