無題

男と別れたいと思っている さよならといい背を向けた 未練なくさっぱりして気分がいい
けれども男がいう お前がいないとだめなんだ 行かないで欲しい
男の夢追いにはついていけない もう我慢がならない
けれどもはたと切りがつく 夢の相手などしなくてよい 男自体の相手でよいではないか それはそれで楽しやってきたのではないか するともがく男の苦悩がかわいらしく見え男が小人のように手の平に踊っているようですらある そもそも男の夢が崩れようがこちらの生計はびくともせず脅かされもせず という自信がざっと開けると 男の影の形は離れた 私は振り返って微笑む
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# by olzon | 2013-07-28 19:40

箱の中の虫

この夏、鈴虫を飼った。まずオスが死に、歌声が消えた。
死骸はメスに喰われ、しばらくメスは生き生きしていたかのように見えた。
しばらくして、メスも食欲が弱り、新しく代えた餌をかじった形跡なく、乾いていた。
小さな箱の中の変化は逐一、生の様子が透明だ。

ぴんとはった艶々の触覚も抜けた髪の毛のように水気がない
箸でつかむと、からからの重さが哀しい

これが箱でなければ、と思う
自然界にいれば、草が生い茂り、アリが喰らい、誰の人に知られることなく土に還り
夏草の生に生き代わっただろう

すべての鈴虫がいなくなった翌日、死んだ祖父のことを思った
火葬場での最後の姿を皆で囲んで遺骨を拾った時
箸でおそるおそる掴んだ時のこと
つけていた眼鏡だけは形をとどめて在ったこと

そう思い出していたのは風呂場でのことで
子どもがたたたと駆けてきて
ママーと私を呼ぶ

ママスイッチに切り替わり、慌てて風呂場を出る

きっと祖父の魂もにんまりしていることだろう
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# by olzon | 2012-08-31 00:38 | - 触

臨望寺

母と東京湾の中古マンションを見に行く
晴海か豊洲辺り
新婚の貴方達には(広さが)ちょうどいいんじゃない?と母は言う
広間の様で廊下はない
畳がまた青い匂いだ
リビングの半分はこんもりと造り付けの丘を作り、さくを設け、
愛らしい女性の蝋人形を立てている
売主は、地方の寺の住職で、娘の結婚式をここでしたという
式の為にここを買い、しばらく打ち合わせスペースに使用していたが、
売ることにしたそうだ
この人形は破棄していいのかな
と私が言うと
もしかしたら破棄するなという規約があったりしてね、
だったら誰もここ買わないわよね
と雑談する

窓の外はすぐ海
マンションは水辺の中に立っている
よしずをフェンスがわりに足元に立てている
津波、大丈夫だろうか

金づちのはずの母が海に浸かり、散歩中の人と世間話している

海に対して、マンションの広場はタイル付けで明るい
マンションの子供なのか、思ったより大勢の子供達が
きゃあきゃあ走り過ぎて行く
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# by olzon | 2012-08-21 17:51 | 夜の夢

子どもの距離

生まれてからしばらくは肌にぴったり
挙動を常に見ている

一年後、よたよたと歩き始めると
動きを後ろから追いかけていつでもキャッチできるように

二年後、とことこ道路にはみ出さないようにはらはらしつつ
公園でベンチに座って、手助けせずとも
すべり台を上り、滑るのを見ている

あれ、手が離れていく
と気づく

だっこ、とせがまれて面倒だ、と思うのも期限付き
だっこさせて、とせがんでもいや、とかわされる期限切れの時が来て
あの時、もっとだっこしてあげればよかったと後悔する近い未来のことが
想像できるのに、かんしゃくやわがままに頭にきて反省する
当日の昼下がりや就寝前

公園の池で、噴水の向こうから、時折、ベンチのこちらを見て
おーい、と手を振る子ども
それで、はーいとにっこり手を振り返す

遠景なのに、あなたの笑顔がよく見える

こうしてどんどん、距離が長くなり、一体どこまであの子は行くんだろう

子離れ、の未来も望遠鏡で透けて見えるように
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# by olzon | 2012-08-19 17:25 | - 触

徒歩

自転車で慌てて帰る道、待っている人を迎えに行く道では、目的地しか見えていない
信号が赤か青か、車が危なくないか、重いペダルのことを考えている

ときたま徒歩で帰る道、周囲の豊かな情景に気づく
雑踏の環環音がこんなに心地よいなんて
ラジオのように聴覚が開く
何のかせもなくカバンひとつで風景を横切る

そこでもしあの子なら、どんな風にこの風景を見ているんだろうか
するとわたしから離れてふだん観察しているあの子の感性がうつる

こどもはこんな風に豊かに世界を感じているのか

自転車に乗って、無言でいて、なにを思っているんだろう
と思えば、突如数時間前のできごとを口にする

見聞きした景色に記憶が反応し、あふれたことばなんだろう

自転車の思考から徒歩の思考へ、再びレッスンを始めようと思う
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# by olzon | 2012-08-10 23:40 | - 聴

金魚

田舎の旅先にてバスに乗る
暑い夏だ
通りは日を照り返してじりじりしている
帰宅中の日焼けした女子高生ら、水溜まりをよけて歩いている
前日は大雨が降ったのか、どの水溜まりにも大きな金魚が泳いでいる
次第に小さくなる水溜まりの中窮屈そうだ
このまま水が干上がったらどうなるのか
気にとめない風に歩いている高校生に聞きたい一心だったが。
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# by olzon | 2012-01-08 11:15 | 夜の夢

学校

廃校になった小学校を利用した学校が運営されている。こども、成人一緒くたになった新しい学校、サークルの寄せ集めのようだ。部屋ごとの交流はあまりないように見える 最上階は自然派をモットーとする人たちのクラス ウッドデッキの上で主にリネンの服を着た若い人たちが自然食を楽しんでいる 暖かい日差し 誰かに笑顔で問いかけられる「あなたは?(誰?)」 私はこのクラスのメンバーではない 階段を上りすぎて迷ってしまった ごめんなさい、通りすがりですと手で返す 踊り場の階段に出てほっとする 踊り場では階段を利用した科学部の実験が行われている ちゃちな工作物を踏みそうになり壊してしまいそうなあぶない思いをする 科学部員は工作物を見る延長上で私を見る このような真剣さを私は持っているだろうか?科学部も私の所属する場所ではない 私の所は確か階下にあるのだが・・ 休憩時間に入り教室からはたくさんの人が出入りしている 知っている顔はないからこの階ではなかったかしら?・・さらに階下に降りながらはたと思い出す さっきクラスメート(同僚)から、辞めたXさんを見たよ というので挨拶がてらに出ようとして校内で迷ったのだった そんなに会いたいというわけでもないが・・降りる途中トイレに行きたくなり2階程のトイレへ そこは従来通りの小学生クラスの階のようで、色どりさまざまな服を着た小学生数人が手を洗っている 「大人?」といった顔で私を見上げる この頃の自分について一瞬で遡る気分になるが何も出てこない 
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# by olzon | 2009-10-07 10:06 | 夜の夢

海岸にて

一人で自転車旅行をしている 途中、海水浴場へ立ち寄る 昼も過ぎるとすぐに満ち潮に アジのような魚群が浅瀬まで来ている 魚のぬるりざらりした感触が体に触る 魚がこちらに来るようにしかけてくる このまま一緒に深いところにくれば魚になれるというように 連れられないように 藻の生えた岩場につかまりながら砂浜に戻る 浜の人たちは水遊びを終えた笑顔 一人で海にくる女など知らないように 波除の壁に立て掛けていた自転車の所へ戻る 警官が見回りに来ている 疲れたようにしているビキニの私を見て大丈夫かと声をかける   
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# by olzon | 2008-12-20 19:29 | 夜の夢

T氏

4F建ての古いビルにT氏は住んでいる 4Fまであがるには各階の部屋の前を通って階段であがる。エレベーターはない 管理人は元々いない 一見コンクリの構造だが、内部は木造のようだ 長く住み着いた住人の匂い、みしみしする床・・木賃宿のよう 夢の中ではT氏は現実にいる人そのものであり、偶然知り合った他人でもある T氏とは橋の上で知り合った T氏の部屋には私の母の着ていたユニセックス風の服が3着ほど、壁のレールの上に引っ掛けてある すべて見たことのある母の着ていた服があるのが不思議に思う 「これはどうしたのですか」と尋ねると「前の仕事、橋の上で野菜を売っていた時にお客さんとしてきていた人がくれたのです」と言う みすぼらしく見えたのだろう 今でも身なりを気にしない風だ そういえば、母が、通勤途中にいい野菜を売っている店があるといっていたのを聞いたことがある 売り子に服を上げたとは聞かなかったから母はこんなことをしていたのだと思う T氏の部屋には家具らしい家具もなく やや散らかっている男の部屋だ 彼はクモを飼っており、調教しているところだ くも使いになる練習をしている 趣味の域から何かに役に立つとして クモは私に飛び掛りなんとか払いのけようとする私 T氏は攻撃させるつもりはないが、クモが勝手にそうするのだ 恐怖心も相まって必死だ クモを追い払うのに疲れた私は床の上にぐったりと寝そべる いつしかクモはいなくなった T氏の指示だろうか 私は橋の上で見たT氏に誘われるまま家に来た 小さなおどおどした目に惹かれたのも理由だ 目を閉じてT氏が近寄るのを待っている
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# by olzon | 2008-10-23 19:11 | 夜の夢

選手kのこと2

頂点にあった 誰がみてもそれが明らかだった 選手kは他の選手の注目をあつめざるをえない 彼以外の選手は彼の得た「1番」を、幼少からそれだけを目指して日々訓練してきたのに叶わない 彼は台風の目にあるようにしん、としている 人に取り囲まれているというわけではなくて、彼の気持ちがだ 望遠カメラを覗いたように心の息遣いが聞こえる感じがした k選手は仕事場から離れると一流の選手らしからぬことをした。報道は一度もその写真や映像を流さなかったから スポーツバッグからタバコを取り出し慣れた風に火を着けた
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# by olzon | 2008-09-10 23:15